ツジ遺跡

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 ツジ遺跡は、元町地区を南北に流れる砂川(すながわ)(音無川(おとなしがわ))の東側に広がる、奈良時代から平安時代にかけての遺跡です。
 発掘調査の結果、多くの掘立柱建物跡のほか、井戸・溝・柵の跡が集中して見つかっています。建物跡には、柱穴の大きさが1m以上のものもあります。建物や溝・柵は、おおよそ数百m四方の広い範囲内に方位を合わせて計画的に配置され、同じ場所で数度の建替えが行われています。

ツジ遺跡の建物群〔9901T〕

 遺物としては、須恵器(すえき)・土師器(はじき)を中心とした日用雑器のほかに、「奈良三彩(ならさんさい)」の蓋付小壺(ふたつきこつぼ)が出土しています。奈良三彩は、上薬で鮮やかな三色(緑・黄・白)に焼かれた奈良時代の陶器です。この小壺の中には、ガラス製の小玉(こだま)が54個納められており、当時の建物などを建築する前に行う地鎮(ぢちん)の儀式に伴い埋められたものだと考えられている、全国的に非常に希少な例です。他にも、「厨(くりや)」(食事の用意や調理をする場所)という文字が墨で書かれている「墨書(ぼくしょ)土器」や円面硯(えんめんけん)・風字硯(ふうじけん)などの陶製の硯(すずり)、役人が着用したベルトに付けられていた「石帯(せきたい)」(石製の飾り)、当時の高級品である「緑釉陶器(りょくゆうとうき)」などがあります。緑釉陶器は、東海地方や京都府・滋賀県などで焼かれた緑色の上薬がかかった陶器で、その出土量は一遺跡としては広島県内で最多を誇ります。

奈良三彩


「厨」墨書土器


「養」刻土器