前原遺跡は、府中市父石(ちいし)町前原に所在する遺跡です。
芦田川が大きく湾曲(わんきょく)し南から北に流れる部分の狭(せま)い谷の東側、山裾(すそ)の緩(ゆる)やかな斜面(しゃめん)から川岸にかけての幅約百二十mの平地に位置しています。
昭和十年(一九三五)の福塩線(ふくえんせん)建設に伴(ともな)う工事で、奈良時代の瓦が大量に出土したことにより発見されました。当初は寺院跡と考えられ、「父石廃寺(ちいしはいじ)」や「前原廃寺」などと呼ばれていました。
現在では「芦田駅家(あしだのうまや)」と考える説が有力になっています。駅家(うまや)説は、「マエハラ」という地名が「ウマヤ」→「マヤ」→「マエ」とつながることや、大量に出土している瓦を他地域の瓦文様(かわらもんよう)と比較研究した結果から推定されているものです。