船橋市西図書館では、図書館活動の一環として、平成十四年度から「船橋市西図書館の古文書を読む会」の会員によって、西図書館所蔵の古文書を読み進めてまいりましたが、この度第八集『嶺岡紀行・浜路のつと・弐笑人成田参詣全・安房雑集』を刊行することになりました。
今回は第七集と同様、江戸時代の紀行文・地誌を取り上げて解読し、翻刻することにいたしました。それぞれの著者は幕臣で寛政の牧政改革の功労者として知られる人物、江戸住の国学者で文人である人物、船橋周辺に住したと思われる文学・歴史好きの人物、安房周辺の地歴に通じた人物と多彩です。紀行文にはいずれも和歌や俳諧(俳句)が多く収められ、特に前二者は文学的な作品となっています。『弐笑人成田参詣全』は訛語と当て字が多く、歴史の記述にかなり誤りがあるという難点がありますが、希少な郷土人の作品という視点から収載いたしました。
船橋市西図書館は四年前の大震災の被害を受け、同会の活動の場所も、使用施設を他に求めて継続しておりますが、会員諸氏の調査・研究はいっそう深化しています。
船橋市の図書館は、開館以来六十九年の歴史があり、その間に収集した多数の古文書や浮世絵などの貴重な資料は大きな文化的遺産となっております。
これらの資料を十分に活用していくことは図書館の使命の一つであると認識し、度々展示会を開催して多くの方々にご覧いただいておりますが、本書の刊行もそうした貴重資料の活用の一つであります。
また、西図書館では平成二十四年度から古文書や浮世絵など貴重資料のデジタル化にも取りかかりました。今後も船橋市や千葉県内の郷土資料に関する中心館として収集・保存とその活用に努めてまいります。
最後に、この史料集第一集からご指導いただいた国立歴史民俗博物館名誉教授塚本学先生には、去る平成二十五年四月ご逝去なされました。長い間のご指導に感謝し、慎んで哀悼の意を表します。
平成二十七年三月
船橋市西図書館長