板坂耀子によると近世の紀行文には「土地の人々の生活・産物・自然等に目を注ぐ博物学的要素があり、土地の人々の生活や風物を冷静に客観的に観察する」という特徴がある。
また、近世の紀行文には次の三要素が随所に見られるという。
①旅先の土地や旅の実態、見聞した事物とそれに関する知識、また旅によって変化する自己の内面を、できるだけ多く読者に伝えようとする姿勢。
②感傷的にならず積極的に旅の困難に対処し、時には笑い飛ばす主人公の造型。
③自己の内面も外部の風景も、常套句や共通の定式、規制の様式によりかからず、具体的で的確な語句を用いて確実に伝えようとする工夫。
右記の特徴や要素は、『浜路のつと』の記述にも合致している。