〈要約〉
○小雨が一日中少しも止まない。御主が碁を打ちましょうとおっしゃるが、知らないので、と言うと、ただ並べて、さあさあと唆しなさるので、しかたなくあまりに従わないのも道理に合わないだろうからと、碁を打ち始めた。近い辺りの人々がしばしば訪れるので譲ったちょうどその時、本つ家からの使いに今から来なさいと言ってよこした。それではと行った。ここも関の大和主の住居や庭の作りざまと少しも劣らなく感じた。琴三味線など取り出して、主の母君妹君も手をもてあそびながら、二人にも勧めなさるので、互いに引き交わして楽しんだ。外の事は、例のように書きもらした。夜も更けましたので帰らなくてはと言うと、薄茶一服と言ってまた止められ、漸く子の半に帰った。