卯月晦日

   〈要約〉
 ○天気が良い。朝早く鶯の声で目が覚めて、〈明ほのゝ霞の間より聞そめし春おもほゆる宿の鶯〉とし子が桜井で詠んだと語った、〈しほ風にちれとも尽ぬ浪の花とはにこそみめさくらゐの浜〉。夕方峡(山と山の間)に登って、この浦の名前を聞きながら眺めて、〈見もあかぬなみちはるかに立帰り又やくろとのうらの夕なぎ〉とし子〈けふよりはあすの別を思ひわひひとへのそてをいくへしほらん〉
   〈註〉
黒戸の浦 『更級日記』にみえる黒戸の浜は、稲毛の黒砂村の海岸とされるが、木更津市の盤洲鼻周辺の海岸が畔戸(黒戸)に比定する説もある。 〈口絵⑧参照〉