昭和三十七年に「住居表示に関する法律」が制定された。これは乱雑になっている地番の整理を主眼とするはずであったが、現実には古い地名の消滅にまで及んで社会問題ともなった。
その反省もあって、昭和五十年代に入ると地名の研究は、かつてのようなごく少数の研究者、郷土史家が手を染めているという状態から脱し、かなりの広がりを持つに至った。しかし、その広範な研究はようやくいくつかの登山道が見つかったという段階で、成果の蓄積中というのが現状であろう。
地名は土地々々の状態やでき事等の来歴を、無言で示す文化財である。ただし、当地方では昭和四十年代以降に付けられた地名(町名)がいくつもあって、総ての地名が古い来歴を持つ訳ではない。また、そうした新地名の総てがよくないともいえないだろう。
この「ふるさとの地名」は船橋市の市名・旧町村名・古い村名・小地名について、語源、初出資料、伝説、変遷等を中心に紹介するものである。
しかし、地名は全く難解複雑な存在で、一つの地名の語源について、研究者間で異論のあるものが少なくない。それを念頭にお読みいただければ幸いである。