おわりに

 以上で地名の由来の話を一まず終わる。
 あらためて古い地名の語源を見直して、古人の自然に対する観察力に感心した。
 たとえば崖についてでも、直角に近い崖には「かなすぎ」と名付け、赤土(関東ローム層)の露出した崖は「赤ぼっけ」とし、崩れた部分のある崖は「するが」と付けたごとくである。
 そして、かつての村名(大字)も多くが、自然や土地の状態から付いたと考えられるが、そのかなりのものが現時点では語源が確定できない。
 一方、古地名の語源には自然地名の外に、人々の生業や信仰行為から付いたものも少なくない。当地方ではこれは小さな地名(小字・通称)に多いが、これも語源不詳のものがかなりある。(なお、かつての小字数は、船橋市域で一、二七一あった)
 そのように、古地名の多くは単なる記号ではなく、土地と人々のかかわりを伝える〝もの言わぬ文化財〟であるが、くり返し述べたように、現在の研究レベルでは解明できないものも多くあるのが現実である。
 船橋地域の地名語源の探求も、今後の研究にまつところが多いのである。
参考文献
 『地名用語語源辞典』 楠原佑介・溝手理太郎編 東京堂出版 昭和五八
 『船橋小字地図』 著作・発行滝口昭二 平成六
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「ふるさとの地名」は次のような経緯で執筆・改訂したものである。
①「船橋よみうり」の第八十六号(昭和六二・一・一四)から第百五十号(平成二・七・一四)まで連載。
②単行本『郷土史の風景』(船橋よみうり新聞社・平成二)に訂正増補して収載。
③私家版『ふるさとの地名』(平成十一)として訂正増補して刊行。
④平成十二年鎌ヶ谷市分を割愛し、新たに三田浜・都疎浜を加え、訂正増補し、船橋市史談会より発行。(綿貫記)