船橋の平安仏教

 船橋の平安時代の仏教については、古文書や当時のものと確認された寺院(跡)がなく定かではありませんが、市内でも平安期の作と思われる仏像が4体見つかっています。
 まず、正延寺(西船3)には、平安時代に盛んだった密教の本尊である大日如来を中心とする胎蔵界(たいぞうかい)五仏があります。長い間秘仏とされていましたが、最近の調査でようやくその歴史的、文化的価値の高さが確認され、県の文化財に指定されています。
 

大日如来坐像。像高59cm。一木造(正延寺)

 
 次に、念仏堂(海神1)にある阿弥陀如来は、鎌倉仏として市の文化財に指定されましたが、その後の調査で平安末期の仏像である可能性が出てきました。この像は、将門の妻・桔梗の前の創建と伝えられる善光寺(廃寺)から移されたといわれ、また、この近くの海神台西遺跡から「岑寺」と書いた平安期の墨書土器も出土して、船橋の古代寺院を探る数少ない手がかりとなっています。
 

阿弥陀如来立像。像高70m。寄木造(念仏堂)

 
 また、古和釜の東光寺にも、平安期作と見られる薬師如来があります。
 これらの仏像は、どこで、だれが、どのようにして造ったのかはわかりませんが、古くから船橋の人々の信仰を集め、心のよりどころとなってきたことは間違いありません。
 このほか、市内の平安仏には、江戸期に船橋に伝えられたという御嶽神社(前原東5)の蔵王権現があります。躍動的な姿をしたこの像は、関東でも珍しく、また、美術的にも優れたものです。
 

蔵王権現三尊立像。蔵王権現の像高は96.5cm。一木造。左手を腰に、右手、左足を振り上げた躍動的な仏像(御嶽神社)