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 北太平洋高気圧が発達して夏型の気圧配置となり、函館もその勢力の中に入るようになるといよいよ本格的な夏が到来し、これとともに南東季節風の最盛期となる。南東の季節風は北太平洋の湿った暖かい空気を運んでくるので、時として東北や北海道のこの近海で発生した海霧をも共に運んできて、海岸から市街地にかけてすっぽりと霧に包んでしまうこともある。しかし、その程度は、道東部の根釧地方や道南部の勇払地方のそれとは、比較にならないほど規模の小さなものである。
 このころはまた、本州の梅雨期の末期の豪雨と同じように、7月、8月に北上してきた梅南前線の名残りが当地方にひっかかると豪雨が降りやすくなる時期でもある。
 一方、この時期にはそろそろ最盛期となった台風のうちのあるものが、一時は朝鮮半島方面に向い、衰弱して弱い低気圧となって注意をそらされていたものが、日本海をこの梅雨前線に沿って東進して来ることがあり、″腐っても鯛(たい)″といわれるこのような″台風くずれ″によって大雨に見舞われることがあり、油断の出来ない時期でもある。
 函館の夏は短かく、8月下旬になるとそろそろ秋の気配を感ずるので、夏の期間は7月・8月の2か月間で終ってしまう。年間の最高気温は7月下旬から8月中旬にそのほとんどが見られるが、日中最高気温が30度を越す日は年に1回前後、25度以上の日は30日前後が普通なので、北海道の内陸に比べるとはるかに涼しい夏といえる。