降水は冬は雪となるが、降水量としてはその都度雪を解かして雨に換算して記録してある。冬、雪が積る割には雨としての量は少なく、冬季と夏季の雨量の差は目立って大きい。
1年間の降水量を比較してみると、ある年は多く、ある年は少なく、また夏季についても、ある時期に集中して降るなどして、現象にかなりばらつきが大きいので、平均値は目安に過ぎない。
例えば、下図の9月の30年平均の雨量は155ミリだが、昭和45年の9月は、実に506.3ミリの雨量が記録されており、また明治39年の9月にはわずか37.7ミリの雨量よりなかった。
函館の降水量の年変化(1941-1970)
次に明治5年以来100年間のうち、各月別の降水量の多かった値と少なかった値を示してみる。
多かった記録 | ||
1月 | 209.0ミリ | 明治6(1873)年 |
2月 | 221.0ミリ | 明治8(1875)年 |
3月 | 140.6ミリ | 昭和27(1952)年 |
4月 | 210.3ミリ | 昭和39(1964)年 |
5月 | 230.1ミリ | 昭和30(1955)年 |
6月 | 244.5ミリ | 明治7(1874)年 |
7月 | 339.1ミリ | 明治11(1878)年 |
8月 | 390.8ミリ | 明治32(1899)年 |
9月 | 506.3ミリ | 昭和40(1965)年 |
10月 | 272.9ミリ | 明治32(1899)年 |
11月 | 302.7ミリ | 明治20(1887)年 |
12月 | 187.0ミリ | 大正14(1925)年 |
少なかった記録 | ||
1月 | 21.8ミリ | 昭和39(1964)年 |
2月 | 14.7ミリ | 明治16(1883)年 |
3月 | 19.8ミリ | 昭和18(1943)年 |
4月 | 0.0ミリ | 明治9(1876)年 |
5月 | 23.9ミリ | 明治22(1889)年 |
6月 | 21.8ミリ | 大正14(1925)年 |
7月 | 0.0ミリ | 明治9(1876)年 |
8月 | 5.1ミリ | 明治9(1876)年 |
9月 | 37.7ミリ | 明治39(1906)年 |
10月 | 25.4ミリ | 明治9(1876)年 |
11月 | 21.4ミリ | 明治35(1902)年 |
12月 | 29.9ミリ | 昭和26(1951)年 |
降水量の統計には、月合計のほかに1日(24時間)の降水量や1時間の降水量、10分間の降水量などがあるが、100年間のそれぞれの記録的な極値は次の通りである。
1日降水量 | 176.0ミリ | 昭和12(1937)年8月25日 |
1時間降水量 | 63.2ミリ | 昭和14年(1939)年8月25日 |
10分間降水量 | 21.3ミリ | 昭和34(1959)年9月11日 |
最近は局部的に短時間に集中して降る豪雨による被害が多く、例えば昭和47年8月3日には函館海洋気象台の観測値は1時間の降水量が57.0ミリであったが、約8キロメートル離れた同台の函館空港出張所では82.0ミリで、前記の記録をはるかに上回って、付近に被害を与えた。
3.3平方メートルの面積の土地に降る100ミリの雨は、330リットルになる。低地では周囲からこの雨が集中して流れ込むことになるので、短時間の大量の降水は特に大きな浸水災害を生ずることがしばしばである。