郡区町村編制法は、わずか6か条からなる簡明な法で、地方区画の基本線を示したものである。郡区の規模等は地方の実状に則して決められるもので、府県の布達で具体的に実施されるものであった。
郡区町村編制法 | |
第一条 | 地方ヲ画シテ府県ノ下郡区町村トス |
第二条 | 郡町村ノ区域名称ハ総テ旧ニヨル |
第三条 | 郡ノ区域広濶ニ過ギ施政ニ不便ナル者ハ一郡ヲ画シテ数郡トナス(東西南北上中下某郡ト云カ如シ) |
第四条 | 三府五港其他人民輻輳ノ地ハ別ニ一区ト為シ、其広濶ナル者ハ区分シテ数区トナス |
第五条 | 毎郡ニ郡長各一員ヲ置キ、毎区ニ区長各一員ヲ置ク、郡ノ狭小ナルモノハ数郡ニ一員ヲ置クコトヲ得 |
第六条 | 毎町村ニ戸長各一員ヲ置ク、又数町村ニ一員ヲ置クコトヲ得 |
但シ区内ノ町村ハ区長ヲ以テ戸長ノ事務ヲ兼ヌルコトヲ得 | |
(「太政官公文録」道文蔵) |
なお翌年4月8日にはこの法の施行手続き等に関して第7条~第9条が追加された。
大区小区制は廃止され、旧来の郡町村制が復活したわけである。区は「三府五港其他人民輻湊ノ地」に特別に郡の代りに設けられた区画である。各区画の長として、郡に郡長、区に区長、町村に戸長各1人を置き、区内の町村では区長が戸長事務を兼ねることができるとした。郡を官治行政の末端に位置づけ、町村の監督機関とし、町村については、旧慣を尊重すると共に、多くの国、府県の事務を戸長役場において委任分担させ、官治行政の最末端としての位置づけを考慮したものであった。
つぎに府県会規則では、府県会に地方税で支弁する経費の予算及び徴収方法を議定する一定の参政権が与えられた。選挙資格は、地租5円以上納入の20才以上の男子、被選挙資格は、地租10円以上納入の25才以上の男子と、有産階級の参政範囲を明示した。投票方法も、あらかじめ配布された投票用紙に選挙人被選挙人の住所姓名年令を記入し、所定の日に郡区長に提出する方法で、「投票は代人に托し差出すも妨なし」であったから、有力者に有利な選挙方法であった。しかし、議案発案権は府知事県令が握り、議決事項は府知事県令の許可後施行できるもので、更に対立事項については府知事県令が内務卿に上申して指揮を請うこととなるなど、府県会は国家権力の協力な規制下におかれたものであった。
最後に地方税規則であるが、これら地方制度の改革に沿った地方税則の整備であった。内容は前述の通りで(第2章第3節)、毎年2月までに府知事県令は翌年度の予算を立て、府県会の決議を経て5月までに内務卿大蔵卿に報告することになったのである。