次いで同書は営業倉庫の利点をあげる。その利点とは次の3点で、これは倉庫業の存在が、30年末、すでに、函館商業の必要不可欠になっていることを示している。
　一、商人資本の貨物蔵置費用および労働力費用の節減。何も商業のみならず海運業にとっても同じことがいえよう。それが、倉庫業の分化、独立産業化の理由の1つでもある。
　二、金融上の便宜。倉庫の発行する預証券はそれを以て貨物売買ができると共に、質入証券を以て担保物件し、金融機関からの融資を受けることができる。「抑モ倉庫ハ単ニ保管貨物ノ蔵置場タルノミニテハ商業上未ダ重要ノ位置ヲ構成スルモノト云フヲ得ズト雖トモ保管貨物ノ預証券、質入証券ヲ発行スルニ及ビテ始メテ倉庫タルノ本能発揮セラレタルモノニシテ運輸、銀行、保険等ノ各種業務ト共ニ商業貿易上重要機関トナリタルモノ実ニ此効力ノ活動顕著ナルモノアルニ由ルナリ」(前掲書)。
　三、取引の増進。貨物移転することなく、大きな売買ができるので、市場全搬の繁栄を招く。要は、非常に高価な固定資本である倉庫(建物、土地)が、商業全体の共通に利用できる施設となることによって、流通費用が節約できることである。