農地改革

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 終戦直後の国内における緊急措置は食糧増産が至上命令であった。そのため日本政府は戦前からの小作争議、農地問題解決が先決と、対策検討をはじめたが、検討中において連合軍総司令部からの指示命令は、「現在農民と家族を奴隷状態に置いている幾多の悪条件を取除くこと。」であった。
 政府は、健全農家の育成によって農業生産力の発展を図ることは、食糧生産確保の要諦のみならず、日本再建の基盤である。また農業停滞要因である農地制度を根本的に改革し、地主的土地所有の打破を決意し政策とした。
 この政策実施に必要な旧来の「農地調整法」の改正も行われ、自作農創設強化のための計画が打出された。しかし、この計画に対して総司令部から「農地改革に関する覚書」が発令になり、再度計画作成が指示された。
 
 一 不在地主より耕作者に対する土地所有権の移転
 二 農地買取り制度(政府買上げ制度)
 三 年賦償還による小作人農地買取り制度(政府売渡制度、小作人農地取得資金)
 四 小作人が再び自作農から小作人に転落しないことを保証するための制度
 
 覚書指示によって農地改革の実施要領も定まり、各市町村への示達となり、実行に移された。
 農地解放の実施要領の骨子となっている点は、国が中間に介入し、所有権移転を直接施行する方式を採用したが、その内容は次のとおりである。
 
 一 市町村農地委員会が買収農地を決定し、
 二 買収計画を都道府県農地委員会が承認する。
 三 知事が買収令書を交付し、一旦国が所有権を取得し、更に、
 四 市町村農地委員会決定の売渡計画に基づき、
 五 小作人に売渡す(自作農精進見込あるもの)。
 六 登記事務は知事が代表する。
 七 農地買収対価は昭和二十五年まですえ置く。
 八 報償金は都府県三町歩、北海道一二町歩限度で交付する。
 九 買収対価および報償金(買上げ支払金)は千円未満現金で交付し、
   他は農地証券で年利三・六五パーセント、二二年元利均等償還のこと。
 一〇 農地を買う小作農に対しては、
    年利三・二パーセント、二四年元利均等償還とする。
 一一 開墾地適地については、農地に準じ手続きし、政府が買収して農民に解放する。