感無量の別れ

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 十一月三十日、亀田市最後の日、廃市式あるいは市役所の閉所式は、未来に希望を託して取りやめることにした。
 この日市長の退任のあいさつがあり、吉田市長らは、さすがに感慨深い様子であった。退任式について北海道新聞は次のように報道した。
 
    合併実現に感無量 職員から盛んな拍手
      亀田市長の座を去った吉田さん
   函館市との合併を実現させた吉田政雄亀田市長は、任期を一年五か月残したまま十一月三十日で革新首長の座を降りた。合併前日の午後四時過ぎから亀田福祉センターで特別職退任あいさつが行われ、職員の盛んな拍手に送られて別れを告げた同市長は感無量の面持ちだった。
   同市長は四十二年五月、亀田初の革新町長に就任、以来二期六年七か月、緑と太陽のマチづくりなど住民生活優先を旗印に行政を進めてきた。四十六年十一月には市制を施行したが、公約だった函館市との合併に努力、合併反対派により一時はリコール請求もされたが、とにもかくにも一日の合併を実現、同時に市長の座を失い、新函館市の顧問におさまることになった。
   同日は亀田市役所としても最後の日だが、閉所式はイメージが暗いとして特に行わず、特別職退任あいさつにとどめたのだそう。同市長のほか亀田支所長になる原田健三助役、六期二十二年も務めた工藤嘉兵衛収入役、柏崎賢次郎教育長も出席。
   約二百五十人の職員を前に最後のあいさつに立った吉田市長は「合併は私の使命と考え進めてきた。実現できて誠に喜ばしいが、ここに立って最後のあいさつをすることは何となく寂しい気持ちです。」と、しんみりした調子。白い口ヒゲ、時おり口をキュッと結びながら、合併にのぞんだ気持ちなど、ゆっくりした口調で述べ、「今後は函館市の職員と一体になり新市の建設に努力を…」と結んだ。原田助役らもあいさつしたあと、職員の盛んな拍手に送られ別れを告げたが、「ご苦労さまでした。」の呼びかけに吉田市長は何度もうなずきながら、静かに首長の座を去っていった。
   なお、函館市では顧問参与条例を設け、吉田政雄市長を函館市顧問、工藤嘉兵衛収入役および柏崎賢次郎教育長を函館市参与、また原田健三助役は函館市助役に選任され、亀田支所長にもそれぞれ十二月一日付発令された。

亀田市街