周辺アシ原との比較

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 表2・4・2をもとにほぼ同じ環境と思われる函館市西桔梗町と七飯町飯田町との比較を試みたが、種類構成という点でやや違いがあるものの、上位二種がホオジロ科ということと、優占種がホオジロ科に偏るという点でほぼ同じ環境であるといってよい。つまり、これらの地域の秋の渡りは、八月はニュウナイスズメに始まり、九月にはコヨシキリ、オオヨシキリ、ノゴマに変化し、十月のアオジ、ホオジロ、ホオアカ、オオジュリン、カシラダカで最大となり、十月下旬から十一月上旬までに終了することである。
 ちなみに、七飯町では、例年、ツバメが多く記録されている。この種は、繁殖を通じ、営巣地とは別に塒(ねぐら)をとることが知られている(羽田健三『鳥類の観察と研究』一九七五)。その数は繁殖を終え、さらに、南に渡る途中に一時的な塒として集まり、休息していたものも加え八月から九月にかけて最大となる。
 ところで、塒とは、簡単にいえば鳥の寝る場所である。つまり、繁殖をしている間は、巣を形成し、それを中心にある一定の広さを持つなわばりを形成し、その中で子育てをおこなう。この時期、なわばり外で塒を形成する種類もいるが、小鳥類は普通この中に塒をとる。ただし、繁殖が終わると、なわばりは解消されるため、他の場所で塒を形成するようになる。トビ、ツバメ、ハクセキレイ、カワラヒワ、ムクドリ、カラス類などは集団で塒をとるようになる。
 当調査地については、このような塒の存在は確認されていないが、可能性としてはあり得る。しかし、繁殖場所としての、牛舎などの納屋やその餌や巣材など供給する周辺部のアシ原や河川などの減少は、確実に、その生息環境を圧迫している。

表2・4・2 函館市内および周辺部の各調査地の放鳥数上位10種の内訳