イワシの群れが来ると船を出して網を掛け廻した。これに使用する網船はドンブネといわれる和船で、ニシン場で用いられるサンパという漁船と同型の船であった。ドンブネには二〇人くらいが乗り組んだ。
船をおろすときや、揚げるときには、寒中の海に入って作業するものが必要であった。この係りをカラクリバンといい、六人がほとんど裸で仕事をした。
船の前部(オモテ)で一六人がサッカイというオール状の推進具で漕ぎ、船頭がトモガイという大型のカイで舵を取った。掛け回す網は船のドノマ(中央部)からトモ(後部)に積み、アミマキ二人が網のウキとオモリを持って海中に投じていった。オモリはアシといい、石を綱二本でくるんだもの。ウキはアバといって桐アバで、長さ一尺、幅五、六寸、厚さ三寸くらいのものを使用した。網をおろすことをアミマキといった。網は通常ウシロ(右舷)からおろした。
また、漁場によっては、船頭がオモテ(船首)に立ち、オヤジがトモドリ(船尾の大型のカイを扱うこと)をした。方向を指示するのは船頭で、若い者六人が網を交代で投げ入れていった。
網船とは別にチップという小船が付き、これには四人が乗り組み、海底の状態をみたり、海底の岩に引っかかった網をはずしたりした。フクロが引っかかった時には、シオカミからアンカーをおろしてアバをシオカミ(潮上)から引っ張ってはずした。網をはずすために海に潜ることもあったが、これをカツギといった。チップにはオヤジとその補助としてオヤジのウシロミ(後見)がつき、ほかの二人はカツギとなった。