〈イソブネのイカツケ〉

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 イカ漁のことを一般にはイカツケといった。昔はそれほど重要視されておらず、主に前沖自家用におこなう程度であったといわれるが、現在の古老の親の代にはイソブネで、恵山方面まで出漁したともいう。
 イソブネには三人乗りでクルマガイ二挺に櫓を立てた。風の良いときには帆も使用した。イソブネのイカ釣りは、道具はカワサキと同じだが無灯火でおこなった。漁具はトンボ(ヤマデともいう)だけを使用し、ハネゴは持っていかなかった。イカが浮いてくるとトンボの頭をつかんでつった。トンボにはカナ巻き針を使用し、タケ針はイソブネの時には使わなかった。
 イソブネの出漁では自家用中心で、スルメに加工するほどとらず、午後八時か九時頃には帰った。大漁の時には、モッコに入れて加工場に運んだこともあるが取引価格は安いものであった。