イソブネの構造

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 津軽海峡沿岸のイソブネは地域によって船名や船型に違いがあるが、船底部にムダマと呼ばれるくり抜き材を使用すること、推進具にクルマガイと呼ばれる特殊な櫂を使用することなど多くの共通点が見られる。
 最も注目される特徴であるムダマは、複数の部材を接合して構成されている。接合の方法では中心線で左右二本の部材(チョウ)を合わせる方法が一般的でこれをチョウアワセという。原木の太さが不足する場合は中心にさらに部材を挿入するが、この部材をチョウ、またはナカチョウという。ムダマの製作では、一本の木を引き割って左右二本の部材を得る方法が多く用いられた。この方法はセナカアワセと呼ばれる。材の大きさが足りないときには二本の原木から左右一本ずつの部材を得る方法がとられた。
 ムダマの接合では、接合面を合わせるためにクチヒキを使用している。接合方法としてはオトシクギと接着剤として漆が利用されている。
 船底部材としてムダマを使用した船をムダマハギと称した。これに対し、ムダマに相当する部分をシキ(敷)とシタダナ(下棚)で構成した船をシマイハギという。これはシキの両側にシタダナがつき、その上にウワダナが接合される。左右四枚のタナイタがあることから「四枚ハギ」と称されるものである。タナイタのことをカイゴ(海具)またはカイグという。なお、ハグとは船材を接ぎ合わせることで、船をハグとは造船を意味する。