〈山菜とり〉
春になると山菜が顔を出し始める。山菜とりは雨が降って畑仕事のできない時に行ったが、主に年寄りの、女の仕事であった。四月二十日頃からアザミ、カタクリがとれはじめ、五月からフキやワラビ、ゼンマイやコジャクなどがとれた。春はこれらの山菜が食卓に並んだ。また、それらを干したり、塩漬けにして保存食も作った。
女たちはこれらの山菜をリヤカーに乗せて、二時間ほど歩いて函館に売りに行った。新鮮な山菜のほかに、干したり塩漬けにした保存用のものも、家で不必要な分を売ったりした。その売上金は、小遣いにしたり生活費の足しにもした。
〈畑おこしとマキ集め〉
男たちが出稼ぎや漁に出かけている間、年寄りや女たちが畑おこしやマキ集めをした。日常食べる物はたいてい畑で作った。その主なものは、ジャガイモ、キミ(トウモロコシ)、大豆、ソバなどであった。
畑おこしの合間に、食べ物の煮炊きをするために使うマキを四、五人が組んで集めに行った。午前中に二、三時間マキを集め、昼食時に家に帰って来てそのマキを置き、急いで昼食をとって、また出かけた。午後も、二、三時間マキ集めをしたが、それはかなりの重労働だった。
マキは太さ三〇センチメートルの束にし、二、三束を、背中が痛くならないように「ショイコ」と呼ばれるものに入れて背負う。「ショイコ」のない人は、ムシロを折って背中あてにして背負った。場所は、炭焼き用の木の枝ばらいをした所に目星をつけておき、そこに枝木をとりに行った。慣れた人は枝木のなかでも太い部分をとり、慣れない人は細い部分ばかり集めた。細い部分ばかりを背負ってくると、「トンビの巣を背負ってきたのか」といってからかわれた。この仕事は、木に葉がつく夏まで続いた。