小夜着とインツコ布団

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 赤ん坊は、座布団の上に小夜着などを掛けて寝かせたが、誕生過ぎまでインツコ(エズコ・イズコ)に入れて育てた。畑仕事では、留守番の年寄りなどがいない場合は、インツコごと畑へ連れていき、インツコの四隅から中央へ向けて棒をたて、三角の屋根状にした上にトーキビの皮や蓬の葉を掛けて、中の赤ん坊に日が当たらないように工夫した。夜は、たいてい母親が自分の布団に入れて抱いて寝た。
 小夜着は小さい子ども用の袖付き綿入れ掛け布団で、表、裏ともメリンスを使い、袖口は四寸くらい、裾は一尺くらいにふきをたくさん出して作った。女の子は赤、男の子は青紫色の裏地を使った。表地は男の子用、女の子用それぞれの柄物で、病気や外出の時などによく使った。
 インツコ布団はインツコの中に入れる細長い小さめの布団で、布団皮や着物の余り布、またはそれ用に買った木綿地に綿を入れてインツコの大きさに合わせて作った。母親は仕事が忙しいのでおしめを取り替える時と乳を飲ませる時以外は赤ん坊が泣くまでインツコに入れておいた。インツコは昭和三十五、六年頃まで使っていた。