[行事と衣服]

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 正月、盆、祭礼とそのほかの祝い事には、男女共に大人から子どもまで、晴れ着といわれる普段着より良い着物を着用した。夏物は祭りに、冬物は正月に、というように祭りや正月は衣類を新調する機会でもあった。
 神社参拝、各種行事や式典へは男性の出席が普通であったので、男性用の紋服一式は、たいていの家で整えていたという。お召や銘仙の長着の上に羽二重などの黒地の紋付羽織に縞模様の袴姿が男性の正装でもあった。黒紋付の羽裏には、絵柄などを入れた繻子織りで特別に仕立てた額裏を使った上物を着用することもあった。昭和四十年前後より衣類も豊富になり、既製品などが出回り始めると衣類購入の機会も多くなり、四季を問わず必要な時に随時購入するようになって、生活様式も徐々に変化していった。現在は正月や祭りだからといって、特に改まった服装をすることはほとんどなくなった。また、洋装化に伴い男性の紋付羽織、袴姿もあまり見られなくなった。

男性用黒紋付羽織(松田トシ蔵)