ドンジャを仕立てるための刺し縫いは細かい仕事なので、電気が普及する以前は、夜なべで刺し子をするとランプがすぐ曇るのでランプ掃除も含め大変だったそうである。ドンジャを作るときは、刺しやすいようにあらかじめ布を洗い、おむつのように柔らかくした紺または黒の木綿地や絣木綿地を表布に、裏布に藍木綿地などを使い、反物を部分ごとに裁ってから表と裏の二枚重ねにして刺した。 男物は無地か小さい絣模様(布の横幅に二〇個くらいの絣・若い人は一八個くらい)、女物は比較的大きめの絣模様(布の横幅に八個くらいの絣)だが、年寄は細かい絣であった。
刺し方は、布の織り筋に沿って三筋おき(一分五厘間隔)や四筋おき(二分間隔)に黒か正紺のカナ糸で細い七分の木綿針を使い、右手の中指にサラ手カワ(内側に二センチメートルほどのカネの皿が付いた指ぬき)をはめ、全面を横段のべタ刺しにした。手の速い人は三筋おきで一週間くらい、四筋おきで四日間ほどで刺し終えたという。二枚重ねにして刺し終えた布は一枚の布として単衣仕立てのようにして縫ったが、衿下、袖口、裾などは三つ折りにすると厚くなるので裁ちめのままにし、別布(黒木綿)で覆輪(五ミリメートルほどの玉縁様の縁取り)を付けた。この覆輪は装飾になるとともに袖口や裾のほつれや擦り切れを防ぎ、損傷するとその部分だけを取り替えるという合理性も考えて施されたものである。
真っすぐ刺すベタ刺しは津軽のこぎん、南部の菱刺しとは異なるが、岩手県北部の仕事着にはベタ剌しのものがみられる。なお、着物は真っすぐに刺し、手袋や前掛けなどは模様に刺す時もあったが、こぎん、菱刺しといったような明確なものではない。
ドンジャの袖の形は鉄砲袖もあったが、たいていは動きやすいムジリ袖(平袖の袖付けから袖口を残した下の部分を三角に折り曲げたもの、または、斜めぎれのさしわを入れたもの)であり、着丈は普通の着物丈より短く、膝丈や腰丈までのものもあった。