テッケシ(テッカエシ)

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 テガケ、ツカミゴテと共に冬になる前に何足も作っておくのが主婦の仕事であったといわれるように、作業には防寒も兼ねて欠かせないものであった。親指と他の四本の指を入れるところが二つに別れたミトン型(ぼっこ手袋)の綿入れ手袋で、沖の仕事や船のロープを使う時、モッコ担ぎに使用した。厚手の西陣木綿やコールテン、天竺、ネル地などを使い、綿を手の甲側には厚めに入れ縦に荒く刺し、掌側には綿を薄く入れ細かく刺し、両側の合わせ目は覆輪仕立てにしたり、黒の木綿糸で細かくかがって綴じた。手の甲側の中ほどには共布で長さ四寸(約一二センチメートル)、巾五分(約一センチ五ミリメートル)くらいの紐を付け、左右合わせて縛り、見えるところに掛けて使いやすくすると共に紛失をも防ぐ工夫をした。また、濡れた時は吊して乾かした。これは、明治・大正・昭和の鰯漁で盛んに履かれたが、昭和二十年前後に軍手が出回ると、作業にはあまり使われなくなったが、昭和四十年頃まで防寒用などに使っていたところもあった。