味噌づくり

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 春の仕事は「味噌煮」から始まった。男たちが出稼ぎに行く前に、秋に収穫した大豆と、キミを売ったお金で買った麹で一年分の味噌を作った。
 塩カマスを洗って塩抜きして乾燥したものに、大豆を一斗ずつ入れてそれぞれの家の印をつけて、四、五軒分一緒にイワシ釜に入れて煮た。煮上がった大豆を一カマスずつ味噌踏み樽に入れて踏んだ。湯気のたった大豆を踏む時は、とても熱いので、シャツともも引きやモンペをつけ、さらに胴付きの靴を履いて踏んだ。大豆がつぶれたら、塩と麹を混ぜて十分に踏んで自分の家の樽に女たちがバケツで運び貯蔵した。四合味噌は大豆一斗に対して麹四升、塩四升、五合味噌は大豆一斗に対して麹五升、塩五升を加えた。上には笹の葉をかぶせたが、それは防腐剤の役目をした。
 味噌は二、三年目で食べるので、物置には四斗樽が二、三本並んでいた。
 また、一〇×二〇センチメートルくらいのさらし木綿の袋にシソの実を入れたものを、食用にしている味噌樽に差し込んで、シソの実の味噌漬けを作った。それをお茶漬けやおかゆと一緒に食べた。