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 お盆は仏様が家に戻って来る日だといわれた。ご馳走を作って、お墓参りをして、仏様を一緒に家に連れて帰る。仏様に家に居てもらえるのは、十三日から十六日までである。
 お墓参りに行く前に仏壇を飾った。供え物は、果物、お菓子、落雁、こうれん、団子などである。こうれん二枚を糸で繋ぎ、灯籠の両側に三組ずつ下げる。灯籠は、仏様が迷わないように下げるのだという。キュウリとナスに箸を二つに折って刺し、馬と牛を作り供えた。
 仏前の供え物として、上段に五段重ねまたは七段重ねの落雁、中段には赤飯、煮しめや水白玉、下段にはお霊膳、その左右に果物、お菓子類、花などを供えた。お霊膳の料理は、ご飯または赤飯、キュウリの酢の物、煮しめまたは煮物(南瓜やインゲン)、豆腐の味噌汁、トコロテンなどである。水も供えた。仏壇の飾り方は地域、宗教による差はほとんどなかった。ただ、門徒宗の場合はお霊膳は供えず、線香は二つ折りにして灰の上に横にして置いた。
 お墓参りの時のご馳走は、赤飯、煮しめ、酢の物、トコロテン、南瓜を小さく切った煮物である。そのほか、果物、お菓子、ゆでたトウモロコシや、枝豆、お花も供えた。親戚のお墓に赤飯、煮しめ、一、二本のお花を供え、「どうぞ、家にも遊びにきて下さい」とあいさつをする。
 墓前に、持って行ったご馳走やお花、ろうそく、線香を供えて拝み、その後、ご馳走は仏様と一緒に食べた。ご馳走は、ブドウの葉に包んだり、のせたりした。ブドウの葉に包んだ赤飯はブドウの香が移ってとてもおいしくなる。親戚のお墓に供えたものはそのままおいて帰るが、後で、豚屋がリヤカーに大きな樽を積んで廻ってきて、墓前の料理をブドウの葉ごと集めていき、豚の餌にした。
 お墓参りした後、家の仏壇に、墓前に供えたものと同じご馳走をブドウの葉に包んで「仏様ホゲしましょう」といいながら供えた。これは、「仏様、一緒にご馳走を食べましょう」という意味で、おいしい物は一人で食べるものではなく、皆で一口ずつでも分かち合って食べようという心を表したものだという。
 十六日は水仏の日である。この日は、仏様に戻ってもらう日である。十六日の昼過ぎから、水仏をお花、丼一杯の団子、キュウリとナスの牛・馬と一緒に海に流す。水仏は三五センチメートルくらいの長さの木のお札で、お盆の前にお寺から各家に届けられ、仏壇の中央か右端に花と一緒にお盆中供えられていたものである。団子は直径ニセンチメートルくらいの白玉団子で、これは仏様を守る埴輪の代わりだという。キュウリとナスの牛と馬には、仏様の食べるご馳走をいっぱい積んで戻ってもらうという意味がある。