妊娠に関する俗信

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 妊婦はふだんと変わりなく出産までよく働いていたが、妊娠中には「してはいけないこと」として古くから守られてきた事柄がこの地域にもいくつかある。
 行動上の禁忌としては「火事を見ると、生まれてくる赤子にアザができる」「葬式に出てはいけない、どうしても出なければならない時は懐に鏡を入れて行け」「着物の懐に手を入れるな、アザのある子ができる」「高いところに手を伸ばすな、腹に入った子がはなれる」「馬の綱またぐな、予定日より遅れる(馬の懐妊は三四〇日前後なので)」などがある。
 食事上の禁忌としては「筋子を食べると、子どもが白いもの被って出てくる」「脂っこいものや辛いものは食べるな」「大根の千ぎりは子宮にささる」などがある。
 これらの中には、今では迷信としか考えられないものもあるが、「辛いものは食べるな」という食生活上の注意や、「綱をまたぐな」「懐手をするな」「火事を見るな」など、経験上からも危険をさけ心安らかに出産を迎えるための心構えになっているものもある。