後産はエナと呼ばれ、自宅で出産していた頃には各自でエナの処理をしていた。エナは穴を掘って埋めたが、場所は雑倉の入り口や馬小屋、あるいは畑の中など人に踏まれる所に埋める場合と、反対に隣の畑との境になっている土手の陰など、人に踏まれない所に埋める場合とがあった。また陽のあたらない所に埋めたり、汚物と一緒に石油をかけて燃やしたりした例もあった。後に病院で出産するようになるとエナの処理に煩わされることもなくなった。
母と子を結ぶ絆であった臍(へそ)の緒(お)も、エナと一緒に処理されていたが、昭和三十年代後半になると助産婦が桐の箱に入れて渡してくれるようになった。