納棺に使う棺は古くからガンオケ(棺桶)と呼ばれる座棺が使われていた。その形からマルカン、オケ、タルなどともいった。納棺には合掌してあぐらに組んだ遺体を持ち上げて棺に納めた。女性は正座させた。体の大きな人や硬直した遺体は棺に納まらず大変難渋したという。しかし昭和三十年代後半になると、座棺に代わって寝棺が用いられるようになり、その苦労もなくなった。納棺には遺族の髪の毛を少しずつ半紙に包んだものや、故人が生前愛用していた品などを入れてやった。棺の釘は故人に縁の近い人から順に石を使って打った。最後に棺全体を晒に包み、更に一巻きしてから男結びに縛った。湯灌から納棺までの間、ろうそく、線香をとぼし鈴(りん)を鳴らして故人の冥福を祈った。