昔話の分類は稲田浩二・小沢俊夫編『日本昔話通観』(以下『通観』と略す)の方式に拠る。この『通観』は、日本各地で採集された昔話約六万話を、話の型によってナンバーをつけ、分類したもので、銭亀沢地区に伝わる昔話と比較すると、話の分布や日本の昔話の中でどのような位置、どのような特徴を示しているかがわかる。すなわち、ジャンルについては、人の生涯に関する人生的主題を扱う「むかし語り」、もっぱら娯楽のために話される「笑い話」、動植物や物を主人公とする「動物昔話」の三つに大別される。
また、少ない採集記録から早計に結論を下せないが、銭亀沢地区の特徴として、次の三つの点をあげることができる。
①「むかし語り」は、青森県や秋田県に分布する昔話と話型の上で一致するものが見られた。「動物昔話」は少なく聞くことができなかった。話型、採集数ともに少ないので伝承の層は薄い。
②「笑い話」は、出稼ぎの多い漁村であったことから鰊場にまつわる江差の繁次郎話や日常生活の出来事の中から笑い話が数多く伝えられている。通常の人びとと異なった挙措、行動を笑いに仕立てた話もある。
③「狐に化かされた話」や「力持ちの話」は世間話に分類されるが、銭亀沢地区に多く伝えられている。