江差の繁次郎話

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 昔話や笑い話は方言とは切っても切れぬ関係にあり、今なお多くの笑い話が語り継がれていることは、地区の人びとが幸せな人生観を持ち、精神的なゆとりがあるからにほかならず、豊かな方言の生活に支えられているからだと思われる。
 海峡を挟んだ道南地域と青森県の人たちはそれぞれ、生まれも生活体験も違うのに、言葉ばかりかイントネーションやしぐさまで似ていて、驚かされることが少なくない。たとえば、嫁姑(しゅうと)の苦労話にはみじんの暗さもなく、どこかユーモアがあって笑いを誘う。少なからぬ数が、対岸に残る笑い話と共通している。
 道南地域において、笑い話の主人公はほとんど、「江差の繁次郎」に代表されるといっていい。定かではないが一八〇年ほど前、江差で生まれた繁次郎は五尺(約一五〇センチメートル)足らずの小男で頭、目、鼻がべらぽうに大きく、女好きで大飯食らい、酒よしぼたもちよしの両刀使いで、とんちがきき、機転のきく人物だったそうだ。一休さんのような具体的イメージが存在し、漁民などに伝承されたおどけ者話の主人公である。