世間話は、昔話のように定まった形式がなく、身近に生じた出来事を、聞き手の心をたき付けるように自由な物いいで気軽に話をする。体験談や異常な出来事など奇事異聞が話題にされ、うわさ話や茶飲み話ともいう。昔からみれば親子で世間話する家庭が少ない。家族一同が集って団欒を過ごす時間が仕事の関係でずれている。
志海苔の飯田の婆ちゃんは心の広い人で、イリヤマのガッカさんと親しまれ、婆ちゃんが聞き役で、イチジョウの婆さん、隣のロクの婆さん、カクサンの婆さんなどこの辺の年寄りが六、七人朝一〇時頃家の茶の間に集まって話した。昔の人だからまず嫁さんのアラから、孫の話。十五日になると、八幡さんに婆さん方がお弁当を作って集まる。婆ちゃんが死んでから集まって話をする習慣がなくなったという。銭亀沢地区には「八艘(そう)跳びの爺様」「イサダ(プランクトン)の肝っこ」など、特徴ある人物が住んでいて大変興味深い。