夜、オドサンが荷物いっぱい背負って黒岩に来たんだって。ムジナがちゃんと座ってじっと人の顔見ているもんだって。そのオドサンは左足わるく、歩くのにどうしてもビッコひいて歩くんだって。ムジナにもあわてものがいるとみえて、向かいで右足と見て、オドサンの前に行って、一足先に家に着いたんだって。玄関の上がり台にタライおいて足洗おうとしたら子どもたちが、「あれ、オドサン、いつの間に反対足悪くなったの」といったって。いわれた途端に「あ!」つと姿が見えなくなった。みんなが驚いていたら、左足わるい本当のオドサンが帰ってきたって(飯田由枝談)。(『通観』№368)
失踪は狐の仕業と考えることが多く、家族や村人が捜索活動をする。その時、失踪者は道に迷い、全身泥だらけになり、川に入って水びたしになり、馬糞を食い、肥溜めに入っていたりするような異常行動をする。