民間療法

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 今日のように医療の恩恵を容易に受けることの少なかった頃、人びとは自らの手で病気に対処せざるを得なかった。ゲンノショウコやヨモギ、また熊の肝などさまざまな動植物が民間薬として用いられ、多様なマジナイが人びとの間に伝えられてきた。しかも、医療の便が発達した今日でさえ、こうした民間療法が払拭されたわけでなく、家によってはさまざまな薬草が干されているのを目にすることがあるけれど、日常生活ではほとんど使われないのが現実である。
 銭亀町の森セツは、一七、八歳のころ、イボ(疣)が出て、恥かしくて町中を歩けなかった。すぐの兄が畑で蛇の抜けがらを見付けて、その蛇の抜けがらでこするときれいに取れた、という。
 飯田由枝は、寒に入ると、健康な男の子の糞を一か月きれいな水に入れて哂す。寒三〇日哂すと、上澄みを取って哂に通して薬として仕舞っておいた。明るいところでなく暗いところにおく。熱冷まし。熱が出ればそれを飲ませた。ミミズより効く、という。表4・6・6に銭亀沢地区において聞き集めた主な民間療法を掲げた。

表4・6・6 民間療法