噴火各説

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 第1章で詳しく述べたように、恵山は約4〜5万年前から火山活動を開始し、120年前まで、様々な現象・規模の噴火をくり返してきた。第1章第3節の噴火堆積物の分布と層序から判ることとして、大局的な噴火の規則性があげられる。すなわち、最近行われた荒井(1998)の調査によると、恵山の火山活動は図3.18の模式図に示したように、まず爆発的噴火による火砕流噴出に始まり、溶岩ドームの形成と成長があり、山体崩壊または水蒸気噴火をもって、活動静穏期に至るという歴史をくり返してきた。地質観察では、層序表(図1.11)に示されるように部分的に山体崩壊による堆積物がみえていなかったり、火砕流堆積物がなかったりという欠落部分はあるが大体においてはこのようなサイクルを持っていると推測できる。また小規模噴火は、侵食や後発の厚い堆積物による被覆などのために、堆積物として確認できる証拠に乏しい点を考慮することで、このサイクルが支持される。なお、恵山の火山活動中心は、図3.18の模式図に示したように徐々に東へ移動している。
 以上のような噴火の規則性と、後で述べる火山災害対策を考慮すると、最近1万年程度の噴火活動、あるいは最も新しい一噴火サイクルにおける火山活動の内容を把握することが重要であると考える。そこで、ここでは最も新しい噴火サイクルの開始と考えられる元村噴火から最新の噴火であるEs-6噴火までの概要を記すことにする。なお、元村噴火は約8000年前に発生しており火山防災学的にも対象とすべき噴火年代の範囲である。

図3.18 恵山火山の火山活動模式図(荒井,1998)