約1,000年前のB-Tmテフラの直下に存在することから、今から、1,200〜1,300年くらい前の噴火による堆積物であると考えられるEs-3は、火口原および東麓に細粒火砕流からなる火砕サージ堆積物として確認できる。火口原中央部ではこの堆積物が厚く堆積しており、現在見られる恵山溶岩ドームの、部分山体崩壊跡およびそれによる火口原中央部での凸地形が、この噴火と同時期の事件であることが推察される(写真3.1、3.2参照)。勝井ほか(1983)も恵山溶岩ドームの山体崩壊は細粒火山灰(B-Tm、勝井らがEs-bとしているテフラ)の直下の層位で発生したと考えており、荒井(1998)の見解と一致する。Es-3は変質岩片および細粒軽石片からなり、新しいマグマの関与は認められない。このため、この噴火は水蒸気噴火で、同時期に発生したと考えられる山体崩壊は磐梯山(1888年噴火)と同じように水蒸気噴火が引き金になったと考えられる。火口原東部から東麓にかけては本質物資を含まない火砕サージ堆積物も確認でき(図1.16)、70〜30センチメートル程度の厚さで堆積している。山体崩壊による崩壊物質の移動堆積およびこの噴火による噴出量の総計は106立方メートルのオーダーである。
写真3.1、3.2 恵山町タカノス沢(loc.049)の元村噴火堆積物の露頭(荒井,1998)
本村噴火堆積物(Es-MP)大丈夫の緻密岩片と発泡した軽石からなるユニットとその下位の発泡した軽石からなる火砕流堆積物