恵山では約1000年前のB-Tmテフラがほぼ全域に数センチメートル程度堆積している(図1.14、15、16、17)。また、その後、西暦1640年には駒ヶ岳では山体崩壊を伴う大噴火が発生し、噴火湾では津波が発生した。この噴火によって恵山にも火山灰が積もった(Ko-d)。火口原および東麓の恵山岬などでは、この2枚のテフラに挟まれた形で層厚150〜50センチメートル程度の火砕物が堆積している。この火砕物は円磨された鉱物や変質岩片からなり、新しいマグマを示す証拠がなく、水蒸気噴火であると推測される。図1.15に見られるように、堆積物の間には炭化物が層をなして横たわっていた、酸化マグネシウムの層が見られるなど、この噴火が時間をおいて数回に渡って発生したことが判る。なお、この炭化物については成因が不明である。堆積物は細粒の火砕物からなり(図1.15、18)、層厚が側方変化するなど大半が火砕サージ堆積物であり、降下物も間に挟む(写真3.2)。これらのことから、この噴火は数か月〜数年の期間をかけて小規模な噴火を頻発し、時に活動が活発化して一定方向へ火砕サージを噴出した水蒸気噴火であったと考える。H/L値は0.28で、時間間隙を示すレスの層厚を用いた内挿年代は0.6〜0.7kaである(図1.11)。噴出体積は106立方メートルのオーダーである。