[津軽海峡東口は複雑な海洋構造]

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 津軽海峡には、対馬暖流の末流である津軽暖流が通年日本海から太平洋へと通過しており、また東口の北海道側、すなわち恵山沖には春先から夏にかけて親潮系水起源と思われる水塊が存在する。この2つの水塊は、相対的に津軽暖流水が高温高塩分、親潮系水が低温低塩分と性質が異なるが、この場合その境界では顕著なフロントが形成されている。
 フロントとは水温、塩分、水色、プランクトンに代表される特性が異なる水塊の境界面のことであり、これはカーテンで仕切ったような完全な面ではなく、2水塊の混合域となっている。これをフロント域という。
 しかもここ東口には2種類のフロントが形成されて、1つは表面に現れる潮境といわれるフロントであり、もう1つは北海道寄りの海底付近に現れる底層フロントである。潮境といえば漁場形成にとって重要な要素でありこの海域に存在することは昔から知られてはいたが、渡野辺・三宅(〈文献1〉)はその規模や変動に関し、2年8カ月にわたってフロントの構造や位置の季節的な変化、およびその発生や消滅機構を継続研究した。これは1989年4月から1991年11月にかけて月1回の海洋観測を北海道大学研究調査船うしお丸で継続して行った結果に基づく報告である。

図4-1

 
 観測線・方法 図4−1に示すように、恵山から青森県の下風呂の間に1.0〜1.5海里(1海里=1、852メートル)間隔で12点の観測点を設けた。また物理・化学成分の季節変化を三次元的に把握するため、および海底までの断面構造を知るために3本の観測線を設定した。さらに津軽暖流水、親潮系水それぞれの特性をつかむために、それらの流路と予想されるT1〜T5、およびO1〜O4のポイントに観測点を設けた。各観測点では、水温、塩分を測定し、その結果を基に密度を求めた。また栄養塩やクロロフィル−a、溶存酸素量などの化学生物成分の観測も行い生物生産の強さを調べた。同時に流行流速計で水深が5メートル、30メートル、50メートルの測流も行った。