春先に植物プランクトンが大増殖するときがある。これを“春の桜の花が咲く”、と同じ意味合いでブルーミング(開花)という。
これが発生するための条件としては光と栄養塩が必要である。必要な養分は世界中の海底に沈殿している。ブルーミングがおこるためにはこの養分が日光が当たる海面近くにあがってこなければならない。北の海にはこれを可能にする独特の仕組みがある。微生物の死骸などの養分はふだん海底に沈んでいる。冬、北の海では厳しい寒さで海の表面はどんどん冷やされる。冷やされて重くなった表層の水は下へ下へと沈んでいく。このとき海底の水は逆に海面へとわき上がる流れを作る。海底にあった養分はその流れによって広がっていく。冬の北の海ではこうして養分が表層まであがってくる。春になると強まった日射しによって海の表面が暖められる。その水は軽いためもはや下には沈まない。大量の養分を含んだ表層の水に日光が当たる。光合成の条件がそろい、植物プランクトンが爆発的に増加する。
春先冷たい水の親潮で、植物プランクトンの大発生、これがブルーミングである。海の生態系を支える植物プランクトンがここの海域に満ちあふれる。
フロント形成期にブルーミングが発生するときの物理的、化学的、そして生物的な特性について紹介する。