[知内到達]

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 知内町には北海道電力株式会社知内火力発電所があり、1977年以降毎時の水温自記観測を行っている。冬季は冷却による対流混合によって、沿岸浅所では海面から海底まで水温はほとんど等しくなっているが、3月を過ぎると海面水温は昇温するので、冷水を検出するためもっとも深い観測深度のマイナス7メートルの値を用い、1977年以降の最低水温を図5−2に示す。

図5-2

 図中の鎖線は1977年から1983年(一部欠測あり)間の14日移動平均値で、左下図の破線は前述の函館海洋気象台が観測した青函航路上の函館沖の10年平均の旬海面水温である。この期間の水温は(1979年4月と1981年2月のように低温な時期も認められるが)3℃程度に止まり、月齢に対応する振動を繰り返しながら、ほぼ平均値の付近を上下していて、極端な低温は持続されていない。しかし左上図の1984年の場合、2月下旬から日最低水温は急激に低下して3℃以下となり、月齢に対応する変動を繰り返しながら、最低水温は2℃低下にまで低下して、4月末まで低温状態が継続していることがわかる。この年北大研究調査船うしお丸が沿岸親潮水を長期にわたって観測していたが、知内では5月以降も例年にない低温が続いたことを明らかにしている。
 また気象衛星ノアの画像(写真5−A)にもこの冷水が北海道岸に沿って海峡西部に達しているのが撮影されていた。黒潮の暖流系は黒色、親潮の寒流系は白色で、そして津軽暖流は薄い黒色で表されているが、右図では南北海道沿岸と下北半島の津軽海峡側、および東岸が沿岸親潮水でおおわれている様子が写っている。

写真5-A

 このような沿岸親潮水の流入は1985年2〜4月の期間も認められており、この現象が再現性を持つものであることが示唆されている。
 
〈文献1〉 大谷清隆、津軽海峡西部への沿岸親潮水の流入、北大水産彙報、38(3)、 p212、1987