頭が丸く腹がぷっくりと膨らんでいるところが七福神の布袋様に似ているところから付いた名前がホテイウオ。北海道ではゴッコの方が一般的な呼び名である(図7−9)。冬の沿岸の岩礁域にこつぜんと産卵のために現れる。まるでドッジボールのような体形だが、お腹側の吸盤が大きいのがメス、小さいのがオス。箱メガネで水中をのぞくと、石の上に鎮座した1尾の産卵前のメスの周りに、求愛中のオス数尾がぐるりと囲むようにいるとか。手カギでゴッコを捕るときには、周りのオスから順番にカギでかけ、もし間違えてメスを最初に上げようものなら、オスたちは一目散に逃げてしまうことになる。あのユニークな体つきとお腹の吸盤からして、どこかの海底で生活していそうなものであるが、なんと北の海の表・中層で海底のあるなしにこだわらない漂泳生活をしているのである。かつてべーリング海では、中層から表層で巨大なトロールネットでスケトウダラを漁獲していた。この漁獲物の99.9パーセントはスケトウダラだが、残りの0.1パーセントの大半はゴッコだったとか。しかも、彼らの胃からはクラゲ類が大量に出てきていた。