クロマグロ(図7−10)の分布域は全世界の温暖域に広がっている。北太平洋でパラオ・マーシャル群島以西の赤道海域、フィリピンから北海道近海にいたる沿岸域、カリフォルニア近海に分布する。南太平洋ではオーストラリア東部とチリ沖、大西洋では南北アメリカ大陸近海と地中海に分布する。また、漁獲量は少ないがインド洋にも分布する。マグロ類では高緯度まで分布し、低水温に対して強く、成魚は水温7〜8℃にまで耐える。北海道の日本海沿岸域では、6月中旬ころから本州方面から北上して来遊し、その北端は利尻、礼文島にまで及ぶ。その後、9月ころから南下回遊を始め、12月上旬以降はこの海域から姿を消す。産卵は主に南シナ海、東シナ海および日本近海にいたる海域で5〜7月に行われる。また、ごく少数例ではあるが、日本海や三陸海域での産卵の可能性が示唆されている。一般的には体重50キログラム、5歳ころより成熟するとみられる(〈文献6〉)。
ところで日本におけるクロマグロの回遊の生態調査は、マグロに小型の超音波発信機を付けて船で追跡する時代になった。冬に東シナ海で成長する若いマグロたちは、春になると猛スピードで日本海と太平洋を北上してくる。おそらく、餌となるカタクチイワシやスルメイカを追いかけていると考えられる。ところが、東シナ海で普通の標識を付けたマグロがアメリカ西岸で再捕された。黒潮は日本列島に沿って太平洋を北上し、三陸あたりから太平洋を横断するように北米大陸に向かって流れる。クロマグロは、この大きな海洋の流れを利用して生活しているのである。
日本海に回遊する群れが対馬暖流に乗って北上して津軽海峡にやってくるが、第2節3で説明した対馬暖流の流量変化によって平成9年にクロマグロが豊漁になった(〈文献7〉)例は次の通りであった。
大間町沖合の津軽海峡でマグロの1本釣りが好調だ。大間漁協の10月の水揚げは300本を超え、5億2870万円と史上最高の水揚げ額を記録した昨年に続き、今年も豊漁模様。浜は例年以上に活気づいている。
大間漁協によると、今年のマグロ漁は7月31日から始まった。8月は200キロ以上1本を含む49本、9月は2百キロ以上10本を含む130本の水揚げを記録。10月は300本を突破し、昨年の290本を上回った。
型は最高で297キロと小さめだが、漁師は2年連続の豊漁に大きな期待を寄せる。
マグロ漁は大間崎北方沖約2キロメートルの海域で、朝5時ごろから始まる。大物がかかると、釣り上げるのに30分から1時間以上も格闘する。大間漁協は「昨年並みかそれ以上を期待している」と話している。