[縄文時代]

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 完新世になって人類をとりまく環境は大きく変化し、世界各地で環境に適応した生産手段の開発や技術革新が行われた。農耕や牧畜が開始され、弓矢や丸木舟、土器を製作するなどの新しい技術が開発され、旧石器時代から新石器時代へ移行したのである。
 日本列島でも同様に汎世界的にみられる技術革新におくれをとることはなく、旧石器文化から新石器文化の縄文文化に移行したが、森林資源や海洋資源に恵まれた温帯中緯度に位置していたことから、農耕と牧畜を積極的に採り入れることはなかった。だが、弓矢と土器製作技術は、世界でも最も古くから開発された。氷河期の終わりに近い約1万2千年前には落葉広葉樹が分布していた九州で土器が製作され、旧石器時代末期の細石刃石器群とともに使用されていたことが知られている。
 土器は運搬・貯蔵・煮炊きという用途をもつが、土器を使用した煮炊きの技術を得たことにより調理法が大幅に変化し、旧石器時代には利用できなかった食糧資源の開発に道を開き、食生活の中で重要な役割を果たすこととなった。
 土器は自由に変形できる粘土を材料としているため、いろいろな表現が可能で、地域や時期の違いによる好みや流行が、形や文様に表現されやすい。土器の形や文様の違いを利用し、土器の変化を時期区分の基準とする方法が土器の編年で、考古学の基本となっている。日本の縄文時代を草創期、早期、前期、中期、後期、晩期の6期に区分したのが山内清男で、各時期は土器の器形や文様の変化、出土層位を目安としてさらに細分されている。だが、それはあくまでも土器の編年で、各時期における文化の内容や特色にもとづいた区分ではないため、土器の編年と文化の時期区分が一致しないことが多い。
 北海道の縄文土器については昭和10年頃から編年の整理がされてきたが、草創期に該当する遺物が不確実で、今のところは早期から晩期までの5期に区分されている。