縄文時代早期中葉には、オホーツク海沿岸から釧路、十勝、上川地方などに石刃鏃と呼ばれる幅1.0~1.5センチメートル、長さ5~6センチメートルの石刃の腹面を細かく加工した石鏃を特徴とした特異な文化が広がる(第16図)。石器の種類や製作技法は縄文文化のものとは異なり、旧石器の製作技法に近い。土器の量も他の早期の遺跡と比較すると非常に少なく、全く伴わない場合もあり、研究者によっては早期のなかでも古い時期に位置づける研究者もいる。このような遺物は中国東北部、ロシア沿海州地方やシベリア、サハリンにみられ、その起源が大陸に求められている。
第16図 石刃鏃(湧別町市川遺跡)
『湧別市川遺跡』湧別町教育委員会、1973