大正期の村行政の充実については先に述べたが、その基本法となる北海道1、2級町村制は府県に比し相当の制約を受けていた(例えば、府県では1・2級の差別はない等)。2級町村制度は明治39年(1906)勅命第183号で公布以来、たびたび改正され是正されてはきたが、この昭和2年(1927)の勅命第275号で全面的に改められ、1級町村制と大差はなくなった。それだけ北海道の町村の自治制が成熟してきたということであろう。なお、この勅命第275号は、次の諸点でかなりの特異性が見られる
①一般町村(府県の町村及び1級町村・以下括弧内省略)では、居住年限が「2年以来」だったが、2級町村(改正・以下省略)では、「1年以来」として『移住者の公民権資格の取得』が容易なものになった。
②1級町村では、選挙人名簿を定時に作成したが、2級町村では、年々新移住者があり多数の住民に選挙権を与えるため、選挙のつど作成する『随時選挙人名簿』となった。
③1級町村の町村議会の議決権は、例示列挙の方法によっているが、2級町村では、『限定列挙』され、掲げられた事件(議案)の範囲内でしか議決権がない、となった。
④1級町村では、書面決議の制度はなかったが、2級町村では、軽易な事件については町村長は町村会を招集せず、期間を限定して『書面決議』の方法を取ることができるようになった。
⑤〈町村三役について〉1級町村では、町村長及び助役をそれぞれ1人(助役については条例で増員できる)を置き任期はそれぞれ4年、その選任方法は、町村長は町村会で選挙し助役は町村長の推薦により町村会で定めるものとしていたが、2級町村の町村長は、北海道庁長官が任命し別に任期の定めはなく、助役は置かずに町村長の故障あるときは『上級の書記が代理』するとなっていた。また、1級町村の収入役は、1人置くことが通例とされ(条例で副収入役を置くことができる)、いずれも町村長の推薦により町村会が定めたが、2級町村では収入役の選任は町村会の推薦により北海道庁長官が任命することとされ、副収入役の制度はなく、特別な事情がある時には、支庁長が町村長または書記にその職務を兼掌させることができた。
〈一般職等について〉1級町村、2級町村共に町村内に区をおき、臨時または常設の委員を置くこととされた。吏員については、定数を北海道長官が定め、書記は支庁長が任免し、その他、必要な有給吏員については、定数を町村会が議決を経て定め町村長が任免することとなっていた。
⑥2級町村では、町村長及び書記の給料や旅費は、北海道地方費より支出することになって、その額や支給方法は北海道庁長官が定めることとなった。
中でも⑤⑥は、2級町村では職員に適当な人材を得難いことや、町村財政上の救済的な理由からのものであるが、特異な制度である。
この昭和2年に定められた北海道の町村制度も、その後しばしば部分的な改正があったが、前節の5、に記した『昭和18年6月、北海道1、2級町村制廃止』まで続いた。