地球温暖化問題など、地球規模のエネルギー、環境問題が人類にとって差し迫った問題として急速に浮上してきており、エネルギーの効率的な利用や、省エネルギー対策として、新エネルギーの開発や利用を強力に推進することが急務となっております。
風力エネルギーは国の政策上、特に期待されている事業であります。
概要について説明します。町が五一%出資する第三セクター『恵山クリーンエネルギー株式会社』による風力発電計画であります。新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)から補助金を得て、恵山町高岱地区パークゴルフ場の裏手にドイツ製の風車二基、発電能力二千九百キロワットで、風況調査の結果、年間八百万キロワットの発電が見込まれますが、一五%減の六百八十万キロワットで経営計画を立てております。電力は、北海道電力に一キロワット当たり一一円六〇銭で販売することが決定しており、年間約七千八百万円の売り上げを見込んでおります。
運転開始は平成十四年四月を予定しております。なお、風力発電の固定資産税は予定ではありますが、今後十七年間で六千七百万円程度が納入されることになります。
山田町長の風力発電事業へのねらいは、国策であるクリーンエネルギー事業へ積極的に参画する恵山町のイメージアップと、今一つは、25パーセント内外に低迷している自主財源を、この固定資産税と電力販売により少しでも増収できればという願いがあった。
[図]
風力発電装置が完成 町が51%出資する「恵山クリーンエネルギー開発株式会社」の風力発電事業の発電装置が完成し平成14年2月に運転を開始した。
建設場所は11年4月オープンしたシーサイドパークゴルフ場のすぐ傍で、平成13年11月5日から組み立て作業が始まり、11月末には2基が完成した。
この風車はドイツファーランダ社製の1,500キロワットと1,400キロワットの2基で、完成するとフルパワーで1,200世帯の電力を補うことできるという。タワーの高さは60メートル、直径70メートルのブレード(羽根)を含めると高さ95メートルになるという巨大なものである。したがって輸送も特殊トレーラーに積まれ深夜、特別態勢で搬入された。
搬入された発電装置は7月に基礎工事が開始され、その後ドイツ技師らによる組み立てを開始し11月下旬、巨大な風車は姿を現した。
しかし、運転を開始した発電装置は、当初予定の発電量が得られず、初年度の売電量の実績は予定の30%にも満たない結果となった。平成16年3月、工藤町長は「町政執行方針」の中で風力発電事業について、次のように述べている。「今後も急激に好転する兆しが見えないという状況では、事業自体のあり方を含めて検証する必要があるのではないかと判断し、『恵山町風力発電事業調査委員会』を設置し、現在調査を進めておりますので、これを待って今後の対応を考えていきたい。」
この恵山風力発電事業調査委員会は町長の諮問機関として平成15年11月20日に発足したものだが、調査を進める中で事業推進の根拠となった風速データの誤りを発見するなど大きな進展が見られ、これらの取組に触発された町議会は、平成16年3月議会において、地方自治法100条に基づく特別委員会(風力発電推進事業に関する調査特別委員会)の設置を可決した。
以下、委員会調査報告書から要点を記す。
風力発電推進事業に関する調査報告
【調査項目】1,風力発電推進事業導入経過について
2,風力調査データーについて
3,風力発電推進事業機種選定について
この調査の中で明らかになったことは、
1の風力発電推進事業導入は、国策としての新エネルギー開発の一助としての補助事業の展開の中で、自主財源確保・地域の多面的な将来を創造する恵山町と、風力発電事業を展開したいという業者の(思惑)が一致したところにある。このことから(町側の)風力発電に対するノウハウが乏しい中で事業が進められた。2、3についての問題もこのことに起因している。調査期間中に「恵山クリーンエネルギー開発株式会社」が倒産(自己破産)という事態に陥ったが、この委員会の最も重要な調査項目の、2の風力調査については、町長の諮問機関「恵山町風力発電事業調査委員会」が発見した風速データの誤りについて、風況調査を行った関係者から事情聴取したが、その経緯を解明できずに終わった。しかし、風速データの誤りについての責任をとる形で、町で債務負担すべき金額を工事請負をした業者が全額肩代りすることで、町と合意に達した。なお、委員会の中で少数意見のため採択されなかった事項について、少数意見書(「広報えさん」平成16年10月号に)が出されているので、その中から要点を記す。
21世紀の地球環境を守っていくために、風力発電事業そのものは有意義な事業であり政策であることには論をまたない。ただ、第3セクター会社が、なぜ自己破産せざるを得なかったかを検証する中から、教訓として、自治体事業の合議制と情報の公開、自治体がシンクタンク(頭脳集団)を持ち、研究調査を平行して行うべきなどが挙げられている。