戦後の民主的教育体制の確立および教育改革の実現にとって、最も基本的な意義をもつのは「日本国憲法」の制定であり、これにつづく「教育基本法」の制定である。
日本国憲法制定までの経緯については省くとして、昭和21年の第90帝国議会に「帝国憲法改正案」として提出され、審議の結果一部修正可決「日本国憲法」として、同年11月3日に公布、翌22年(1947)5月3日から施行された。
旧憲法には教育に関する条項はなかったが、この新憲法には“国の基本に関する定め”の1つとして教育に関する事項が取り上げられた。そして、これに関する規定が主として、第3章の「国民の権利及び義務」の中に含まれた。これらの規定は直接・間接に教育に強い関連を持ち、且つ、その後の教育関係立法の基礎となったのである。
特に、第26条「1、すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。2、すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。」と規定し、国民の基本権のひとつとして認め、さらに義務教育の根拠を憲法に定めることとなった。従来、教育に関する国の定めは、天皇大権に属する独立命令・勅命(教育勅語が、それである)によることとされてきたが、国民主権の思想に立つ新憲法の制定により、教育に関する定めは、憲法の理念に基づき法律によって定められることになったのである。 つまり、教育立法の勅令主義から法律主義へ大きな転換を画したのである。
教育基本法 昭和22年(1947)3月31日(法律第25号)
この立場に立った最初の立法は、昭和22年3月に公布された『教育基本法』である。
〈教育基本法の特性〉
①教育に関する基本的な理念および原則を国民代表によって構成する国会において法律という形式で定めたこと。
②憲法の理念をふまえ教育の理念を宣言するものとして異例な前文を付していること。
③今後制定するべき各種の教育法の理念と原則を規定すること。
教育基本法の特性は以上の3点で実質的に教育に関する基本法の性質を持つことである。
〈教育基本法の構成〉
前文 新しい憲法の理念の実現は根本において教育の力に待つべきこと、および「日本国憲法の精神」に則りこの法律を制定したこと。
第1条教育の目的、第2条教育の方針、第3条教育の機会均等、第4条義務教育、第5条男女共学、第6条学校教育、第7条社会教育、第8条政治教育、第9条宗教教育、第10条教育行政についてそれぞれの考え方と原則を規定、第11条補則、教育基本法に掲げる以上の原則的諸条項を具体的に実施する場合には別な法令が定められるべきことを規定し、この法律が基本法であることを明らかにしている。
その後、学校教育法をはじめ多くの教育関係の法律を、これらの条項の具体化のために制定した。以下、終戦後5年間に制定された教育関係の法律である。
学校教育法 昭和22年3月31日 公布
教育委員会法 昭和23年7月17日 〃
教育公務員特例法 昭和24年1月12日 〃
文部省設置法 昭和24年5月31日 〃
社会教育法 昭和24年6月10日 〃
私立学校法 昭和24年12月15日 〃