昭和十五年十月戦争遂行のために全国民の意識を結集し生産を高め、思想の統一をはかり非常時に対応できるように大政翼賛会が結成された。
こうして結成された大政翼賛会は、内閣総理大臣の命令により中央協力会議の下部機関として都道府県ごとに協力会議が設置され、更にその下の市町村には各支部が設けられていた。
各市町村では支部長に市町村長が就任し、各町内会・部落会更には隣保組まで組織化が計られていた。
次に参考として昭和十七年五月二十日に創立された『翼賛政治会宣言』及び『翼賛政治会綱領』を記すことにする。
翼賛政治会宣言
東亜の安定を確保し以て世界の平和に寄与するは、畏くも大詔に明示し給ふところなり、帝国は今や古今未曽有の世界動乱に際し、大東亜戦争完遂に邁進す。洵に曠古の大業なり。皇師一たび出でて、赫々の戦果は世界を震憾せりと雖も、大業の前途は尚遼遠なり。すなはち国民の政治意識を昻揚し、挙国的政治力を結束し、次て国家の総力を発揮し、戦争目的を貫徹せざるべからず。惟ふに此の戦時下敢て総選挙を施行せられたるは、清新強力なる議会の確立を庶幾せられたるものにほかならず。而して総選挙の結果は澎湃たる国民熱意の嚮ふところを明にせり。これ正に一挙翼賛政治体制を確立して、必勝の挙国態勢を完成すべきの秋なり。
翼賛議会の要は清新なる政治力を以て派閥抗争を一掃し、一地一職域の利害に拘らず、真に国家的見地に立ち公議公論の府として政府に協力するにあり。議会翼賛の大道また実にここに存す。
本会は国民各界に亘り政治翼賛の総力を凝集し、以て国政運行に協力せんとす。而して翼賛政治体制の確立は、挙国的国民運動の基礎の上に立たざるべからず。因て本会は大政翼賛会と緊密なる連繫を保ち、相倶に大政翼賛運動の徹底を期せんとす。
(以下省略)
翼賛政治会綱領
一 国体の本義に基き挙国的政治力を結集し、以て大東亜戦争完遂に邁進せんことを期す。
一 憲法の条章に恪遵し翼賛議会の確立を期す。
一 大政翼賛会と緊密なる連繫を保ち、相協力して大政翼賛運動の徹底を期す。
一 大東亜共栄圏を確立して世界の新秩序の建設を期す。
これらの宣言や綱領からも知られるように、国民の総力をあげて戦争に協力させようとするものであり、中でも選挙を通じて太平洋戦争完遂のため、政府や軍部に全面的に協力する議会を確立することに目的がもたれていた。このため衆議院の選挙ばかりでなく、地方の市町村の選挙にまで翼賛会の力が及んできていたのである。