小廻船の戸井沖救助

1167 ~ 1167 / 1354ページ
   大正四年七月十七日 函館毎日新聞
  ●小廻船の遭難
      船体を放棄して海城丸に救はる
   當區東濱町一二番地前田利一氏所有滊船海城丸は去る十三日午後七時紋別より當地へ向け航行中十四日午後三時四十分仝船が亀田郡戸井村約三海里沖合に差蒐(かか)りしに遙かの沖合に當り小廻船が救助信號をなしをるを發見したれば針路を轉じ接近し見たるに仝小廻船は鮮魚を滿載し松前白神より青森へ向け出帆せしが航行中濃霧に悩まされ加(おまけ)に生命とも頼む磁石破損したるより船体の自由を失ひ當てどなく海上を漂ひゐたりと仝船乘組員は語るより不敢取(とりあえず)海城丸は小廻乗組員松前郡白神村伊藤廣吉(三六)村上榮七(一二)仝三次郎(三六)板谷由太郎(三三)の四名を仝船へ移乘せしめ該(がい)小廻船を曳船し當地へ向ひたるが俄然(がぜん)風浪(ふうろう)激甚(げきじん)となり曳船せる小廻船に浸水し遂に航行中轉覆せるより是を放棄し當港へ避難せるが人命に別條なしといふ。