大正十四年十月七日 函館毎日新聞
七名の乗員、海中へ投出される
後方から川崎船に衝かれ
滅茶/\になった發動機船
幸ひ一同豊福丸に救はる
福井縣坂井郡鷹巣村當時市内帆影町十三番地北濱方船頭松田倉松(三七)は漁夫七名と發動機船に乗組五日午前三時頃亀田郡惠山沖合に烏賊釣りに從事し約二万尾を漁獲歸途に就かんとした處後方より和名不明の川崎船が進行して來るため危険を感じ大聲で注意を與へたが同船は故意か操從不能か知らぬが後部に強く衝突したため松田を初め七名の漁夫は海上に投げ出され發動機船は滅茶滅茶に破壊し一同は漸く船の破片に縋り大聲で救助を求めたが顧みずして何れか暗夜を逃亡したので市内より出漁に出て居る豊福丸が發見し一同を船内に救助し當港に歸還その旨水上署に届出でたので目下太田巡査部長秘密裡に調査中である。